2022y06m16d_105512805

 信頼を寄せていた医者に、取り返しのつかない形で裏切られていたら……?

そんな恐ろしいドキュメンタリーNetflixで配信されている。
タイトル『我々の父親』
2022y06m16d_105546500

不妊治療の名医として知られるドナルドクラインが、患者に「精子ドナーのものだ」と偽り、自分の精子を提供して自分の子どもを増やしていたという衝撃の事件だ。
彼の精子を使って生まれた子どもは、『我々の父親』制作時に判明しているだけで94人。
だが、それ以上いるだろうと考えられている。
2022y06m16d_105626132

 制作を手掛けたのは、ホラー映画定評のあるブラムハウス。『パラノーマルアクティビティ』、『インシディアス』、『パージ』、『ゲットアウト』といった過去作同様、怖いだけでなく社会的問題にも切り込んでいる。

だが、これまでの作品とは決定的な違いがある。それは、これが物語ではなく実話であり、当事者らは生きている限り苦しめられるということだ。



参考:ヴィーガンは洗脳されやすい? Netflixドキュメンタリー『バッド・ヴィーガン』から考える

■きっかけはDNAテスト

2022y06m16d_105610837

 『我々の父親』で描かれた不妊治療の医者による犯罪が発覚したきっかけは、ジャコバという女性がDNAテストサービスの23andMeを使って、近親者を探したことだった。

 ジャコバは、親族の誰1人とも似ていないことで、「自分が引き取られた子どもなのではないか」と悩んでいた。そんな彼女に、母親は「精子ドナーに協力してもらった」と打ち明けた。

 大人になったジャコバは、それほど深刻に考えることもなく、当時はやっていた23andMeを使ったという。結果には、近所に腹違いの兄弟が7人もいると示されていた。母親からは「精子ドナーは3人以上に精子を提供していないはず」と聞いていたため、7人もの兄弟がいるのを不審に感じ、調査を始めたのだった。

■不妊治療の名医

2022y06m16d_105553524

 調査を進めた結果、生物学的な父親は、母親の不妊治療を担当していた医者であるドナルドクラインだったことが判明した。クラインがクリニックを開業した1979年当時、不妊治療は凍結した精子を使うのが一般的にされていたにもかかわらず、彼は「新鮮な」精子を使い、数多くの不妊治療を成功させた。しかし、その「新鮮な」精子は、クライン本人のものだったのだ。

 精子ドナーに精子を提供されていると信じていた患者と家族は大きなショックを受ける。育ててくれた父親と血のつながりがなかったこと、母親の純粋な子どもを欲する気持ちが踏み躙られたこと、近所に血を分けた兄弟が大勢いることで知らず知らずに関係を持ってしまっているかもしれないこと……、受け取り方はさまざまだ。

 事実を知った子どもたちをさらに苦しめたのは、クラインの態度だった。彼は保身に走り、事実を明らかにしようと奔走する子どもたちを脅した。話し合いの場に銃を持ち込んだり、身の危険を感じさせる陰湿な嫌がらせをしたりする。自ら犯した過ちを反省する気持ちなど、微塵もなかったようだ。

クラインの目的

2022y06m16d_105612493

 クラインは罪を認めているものの、自白にはいたっていない。なぜ自分の精子を使って患者を妊娠させていたのかという理由はいまだ不明だ。

 子どもたちは「クラインが白人至上主義で、白人で青い目をした子どもたちをできるだけたくさん増やそうとしていたのではないか」というひとつの仮説を立てている。

 というのも、クラインは熱心な宗教家で、子どもたちに問い詰められたときにもエレミヤ書の1章5節「私はあなたが体内に宿る前から知っていた」という言葉を引用している。この言葉から、クラインは自分のやっていたことを自覚していたのだろうと推測される。

 エレミヤ書の1章5節は、「クイバーフル」というカルト集団も大切にしているらしい。彼らは、できるだけ多くの子どもを持ち、その子どもたちを政治家に育て上げてバイブルを基準とした法律をつくる考え方を持っているそうだ。

 クライン子どもたちは、「クイバーフル」の考えとクラインの言動、自分達の外見から、クラインナチス時代の「アーリア人」を作ろうとしていたのではないかと想像している。

■終わらない悪夢

2022y06m16d_105715237

 『我々の父親』の恐ろしさは、クラインの人を人とも思わない行動や、目的が不明瞭であることだけでない。クラインが患者の許可なしに自分の精子で不妊治療をしたことが、罪に問われなかったことだ。感情的にはレイプとも受け取られる行為だが、クラインの行為につける罪状はなかった。

 結果的に、クラインは「取り調べの際に犯した司法妨害」の罪に問われることとなった。彼の子どもたちの調査を妨害した罪で、500ドルの罰金刑が課せられた。多くの人たちの人生を壊した代償としては軽すぎるのではないだろうか。

本作の最後には、自分の精子を使って不妊治療をしていたのはクラインだけではなかったという衝撃の事実も明かされる。まるで、クラインが特別でないかのように……。

2022y06m16d_105727860

アメリカではいまだに生殖補助医療を包括的に規制する法律やガイドラインがなく、各州の州法や裁判所の判例に従っている。日本にも生殖補助医療を規制する法律はないそうだ。

 デリケートな問題ゆえに法規制が遅れてしまうのはしょうがないのかもしれない。
だが、法で裁けないという事実と当事者の心情をおもんぱかると、終わらない悪夢を見ている気になってしまう。



参考:
内閣府
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/future/sentaku/s3_1_10.html

Netflix Junkie
https://netflixjunkie.com/our-father-what-motivated-donald-cline-to-commit-the-heinous-act-of-wrongfully-impregnating-his-patients/

(中川真知子)

『我々の父親』 Netflixにて独占配信中


(出典 news.nicovideo.jp)

Netflix, Inc.(ネットフリックス、NASDAQ: NFLX)は、カリフォルニア州ロスガトスに本社を置く、アメリカのオーバー・ザ・トップ・コンテンツ・プラットフォームおよび制作会社である。1997年にリード・ヘイスティングスとマーク・ランドルフによって、カリフォルニア州スコッツバレーで設
99キロバイト (12,233 語) - 2022年6月14日 (火) 13:55



この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitterで「terracehouse_lovelog」をフォローしよう!

こちらもおすすめ!

このページは「terracehouse_lovelog」が管理しています。
mixiチェック

人気記事ランキング

    コメント

    コメントする

    コメントフォーム
    記事の評価
    • リセット
    • リセット