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Netflixドラマ史上最大の視聴者数を獲得し、同社に1000億円以上の価値をもたらすといわれる『イカゲーム』。
第2シーズンの制作も発表された大ヒット作は、なぜ、これほどまで多くの人の胸に刺さったのか……?
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エンターテインメントおもちゃ箱的な作品

 自身のYouTubeチャンネルは30万人を超える登録者数を数え、多くの著作を持つ精神科医の樺沢紫苑氏。少年時代は「アメリカに憧れる」映画少年で、現在も年間100本以上の映画やドラマを視聴するドラマフリークだ。

「『イカゲーム』は観始めるとなかなか止められなくなる作品で、短期間で非常に面白く観ました。ですが、過去のドラマと比べてものすごい傑作とは思っていません。物語の設定は、ファン・ドンヒョク監督が公言するように『カイジ』(’96年)や『LIAR GAME』(’05年)を参考にしており、“パクリ”といえば聞こえが悪いですが、うまくモデリングされている。

 格差をしっかり描いたのは『パラサイト 半地下の家族』(’19年)の成功を下敷きにし、毎回脱落者が出るパターンは、リアリティショーの要素を盛り込んだ。成功作を集大成し、戦略的に作られたエンターテインメントおもちゃ箱的な作品だと思います」

 樺沢氏は、余暇時間の過ごし方として配信ドラマ最大のライバルは、世界のプレイ人口が27億人ともいわれるゲームだと指摘する。

ゲーマーの脳内では、ドーパミンを次々と求めるエスカレーションが起きやすい。刺激を次々求めるわけです。そういった人たちを満足させるような展開にし、タイトルに『ゲーム』の語を入れ、ピクセル画像のようなビジュアルを用いることでゲーマーを引き込んだこともヒットした要因でしょう」

◆残虐シーンを描くのは配信ドラマでは定石
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 作中、借金を抱えた参加者たちが、大金を目指して勝ち残りを図るが、ゲームに負ければ即殺害される―。残虐シーンが頻出する作品が、なぜ世界で多くの人たちに受け入れられたのか。

「『イカゲーム』に限ったことではなく、自己責任クリックした大人が観るのが前提のネット配信ドラマにはテレビや映画のような制約がないため、残虐描写は定石です。『ゲーム・オブ・スローンズ』(’11年)や『ウエストワールド』(’16年)など制作費が一話10億円ともいわれる超大作でも目を覆うようなシーンが生々しく描かれ、それが大ヒットに繋がった前例があるのです。

 ただ、『イカゲーム』はお子さんも観たがるでしょうし、高画質の映像で死をエンタメとして見せることは、精神科医の立場としては配慮が必要だと感じます」

◆「最後の5分ぐらいが異常に面白い」
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 樺沢氏が『イカゲーム』を「戦略的」と見るには理由がある。先行するデスゲーム系作品やヒット作の要素を盛り込んだだけでなく、Netflixがこれまで集積してきたユーザーの視聴パターンなどのビッグデータをフル活用していると推察するからだ。

Netflixはどうすれば視聴時間を稼げるかを世界でもっとも研究している会社の一つでしょう。先日AIに40万時間分のホラー映画を見せて作らせた作品を公開しましたが、データやAIの活用には積極的。『イカゲーム』は最後の5分ぐらいが異常に面白くて、絶対に次を観ちゃうんです。脱落率のデータを参考に、人間の心理を分析しているのではないかと感じました。

 否応なく時代の空気と波長が合ってしまう大ヒットというのは、どんなジャンルにも存在します。『イカゲーム』も、世界を覆う閉塞感を反映してヒットしたという精神分析的な考察は可能ですが、私はそうではなく、計算され尽くした、AI、ビッグデータ時代の先駆けとなるエンターテインメント作品だと思います」

 ポン・ジュノ監督のアカデミー賞受賞、BTSビルボードワード4冠に続く快挙で、韓流エンタメ存在感は増すばかりだ。

【樺沢紫苑氏】
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’65年、札幌市生まれ。精神科医。樺沢心理学研究所代表。SNSメールマガジンYouTubeなどで精神医学や心理学脳科学の知識・情報をわかりやすく伝え、「日本一、情報発信する医師」として活動。近著に『行動最適化大全』(KADOKAWA

◆「憎めないダメ男」に国境なし
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 ’90年代後半から’00年代にかけて起こった“Jホラーブーム”の先駆けとなった小説『ぼっけえ、きょうてえ』(角川書店)をはじめ、エンターテインメント作品を量産し続ける作家の岩井志麻子氏。彼女の夫、18歳年下の韓国人ジョンウォン氏は、口を開けばお小遣いをねだり、浮気を疑うと謝罪と賠償を要求するようなヒモ気質のダメ男だという。

 一方、『イカゲーム』の主人公のソン・ギフンも、病身を押して露天商を営む母親のへそくりをくすねてギャンブルに溺れるダメ男だ。

「夫もギフンもダメなんだけど、どこか憎めないところがある。悪人じゃないんです。ただ、私はダメ男にはあまり国境はないって思っていて、『イカゲーム』で韓国人男性を体現しているのは、ソウル大学を出た超エリートのチョ・サンウですね」

 サンウは主人公・ギフンの幼なじみで地元の出世頭だったが、会社のお金に手を付けて指名手配となったことから一発逆転を懸けてゲームに参戦。頭はキレるが冷酷で、人を見下すような役柄だ。

韓国人男性はプライドが高い?

 岩井氏は多くの韓国人男性と交際してきた経験から、韓国人男性はこのサンウのように、とにかくプライドが高いと感じたそうだ。

「一度韓国人男性に『なんでそんなに自信満々なの?』って聞いたら『韓国の男が自信を失ったらすべてを失います』って。『イカゲーム』を見てもわかるように、日本みたいな敗者復活が一切ないんです。だからサンウは崖っぷちにあっても、自分はエリートだというプライドにしがみつく。それから、韓国人と付き合ってると、勝ち負け、上下にめちゃくちゃ厳しくて、とにかくマウントを取ってくる。

イカゲーム』ではゲームの主催者が参加者たちを対等に扱いますが、そんな状態に置かれたら、放っておいてもマウント合戦が始まるのが韓国社会なのだと思います」

◆芸能界から政界まで苛烈なデスゲーム社会

 韓国の芸能界では、過去のイジメを暴露されて加害者とされた俳優らが過ちを認めて活動を休止する「キャンセルカルチャー」が盛んだ。権力争いの頂点を制したはずの歴代大統領ですら逮捕や暗殺など悲惨な末路をたどる国では、足の引っ張り合い、サバイバルゲームの苛烈さは社会全体を覆っている。

「韓国社会を見てると、私はユルーイ国にいるわ~って思います。韓国は好きですけど、韓国で暮らせるかって言われたら、それはムリ。シモネタ好きで飲んだくれてるオバチャンが楽しく暮らせる隙間はないですからね。

 でも、北朝鮮デスゲームはシャレにならないですけど、韓国はそこまではいってませんし、激しい競争があってこそ、経済でも芸能でも今の地位を築いたわけです。彼らは苦しい、つらいと言いながらも、結局のところ競争が好きだからああいう社会になってるんだと思います」

◆苛烈なデスゲームを戦う456人に自らを「投影」

イカゲーム』に関しては、当初から日本のエンターテインメント作品を模した“パクリ疑惑”が指摘されていた。『カイジ』(’96年)や『バトル・ロワイアル』(’99年)、『LIAR GAME』(’05年)、『神さまの言うとおり』(’11年)といったデスゲーム作品がそのネタ元といわれるが、岩井氏にとってデスゲームエンターテインメントといえば、楳図かずおの『漂流教室』(’72年)が「本家本元」だという。

「子供の頃に読んだんですけど、小学校の教室ごと荒廃した未来に飛ばされて、生徒と先生たちが殺し合いをするんです。子供ながらに、私ならどうやって生き残るかって考えながら読みました。自分ならどうする? ってどうしても考えてしまうのがデスゲーム作品の魅力でしょうね」

イカゲーム』が世界でこれだけ受け入れられたのは、苛烈なデスゲームを戦う456人に自らを投影し、明日は我が身と感じた人が多かったからなのか。


岩井志麻子氏】
1964年岡山県生まれ。少女小説家としてデビュー後、『ぼっけえ、きょうてえ』(‘99年)で日本ホラー小説大賞山本周五郎賞受賞。今年6月に後継作『でえれえ、やっちもねえ』発売

取材・文/池田 潮 写真/Penta Press/時事通信フォト AFP=時事

豪・シドニー港に「イカゲーム」の第1話に登場するヨンヒ人形の高さ4.5mのレプリカが出現し、コスプレした大勢のファンが撮影に訪れた。コスプレの容易さもこの作品の特徴


(出典 news.nicovideo.jp)

イカゲーム』(韓: 오징어 게임、英: Squid Game)は、Netflixで配信されている韓国のサバイバルテレビシリーズ。ファン・ドンヒョクが脚本・監督を務める。イ・ジョンジェ、イ・ビョンホン、パク・ヘス、ウィ・ハジュン、チョン・ホヨン、オ・ヨンスらが出演する。2021年9月17日にNetflixで全世界公開された。
66キロバイト (9,890 語) - 2021年11月21日 (日) 10:32

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