夏といえばホラー。連日、新型コロナウイルスをめぐる耳をふさぎたくなるような恐ろしい現実が毎日報道されるなか、フィクションとしてのホラーに戦慄することは、心の健康を保つために案外有効な手段かもしれない。というような理屈は抜きとしても、韓国ホラーの面白さである。
国内外のドラマに詳しいライター・大山くまお(@oyamakumao)に、怖さはもちろん、豊かな映像世界を満喫できる韓国の傑作ホラー作品を3本厳選してもらった(以下、大山氏寄稿)。
なかでも高い人気を誇るのが韓国ドラマだ。「韓国ドラマといえばラブコメ、メロドラマが主流」という印象はすでに過去のもの。映画さながらの予算をかけた、没入度の高い、多種多様なドラマが世界に向けて発信されている。
今回は残暑が厳しいこの時期に楽しみたい、韓国ホラードラマを3本紹介したい。ただゾッとするだけでなく、ハードな残酷描写、凝りに凝ったストーリー、ユニークなキャラクター、ドラマとは思えない豊かな映像表現などを楽しんでもらいたい。
イッキ観必至!『Sweet Home-俺と世界の絶望-』
『愛の不時着』『ヴィンチェンツォ』などの大ヒット作品を送り出してきた「スタジオドラゴン」によるアクションサバイバルホラー作品が『Sweet Home-俺と世界の絶望-』。昨年12月に配信が開始され、世界10か国で1位を獲得した人気作だ。主人公は古びた高層アパートに引っ越してきた高校生のヒョンス(ソン・ガン)。ひきこもりの上、交通事故で家族全員を亡くした彼が、アパートで奇怪な事件に遭遇する。隣人たちが怪物になって襲いかかってきたのだ。スピーディーに殺戮されていく住民たち。
外の世界はすでに怪物だらけの地獄のような状況になっていた(大統領が記者会見中に怪物化し、「国民の安全などクソ食らえ」と叫んで射殺されたりする)。ヒョンスは生き残った住民たちとともに籠城するのだが……という物語だ。
登場人物も非常に個性的だ。複雑な過去を持つヒョンスは自殺願望が強い少年だったが、危機的状況の中で怪物と戦うことを選ぶ。武器はハンドメイドの電流槍。だが、彼には大きな特徴があった(それは観て確かめて!)。演じるソン・ガンは『恋するアプリ Love Alarm』(19年)でブレイク、感動作『ナビレラ ―それでも蝶は舞う―』(21年)でも主演した注目株。
残酷描写続出のサバイバルホラー
ほかにも優秀だが冷酷な兄とバレリーナの夢をケガで断念してひねくれてしまった妹、日本刀を操る眼鏡のサラリーマン風クリスチャン、有刺鉄線金属バットを振り回すバンド女子、素手でもめちゃくちゃ強いヤクザ、責任感の強い元消防官の女性、気のいい車椅子の発明家、最愛の赤ちゃんを交通事故で亡くしたお母さん、9歳と6歳の幼い姉弟、勇敢で戦士のような父親と娘、強欲で男尊女卑丸出しの嫌なジジイ、悪質な変態犯罪者などが、協力しあったり、争ったりしながら、生き残りをかけて怪物たちに立ち向かう。
怪物の設定もミソだ。本作を大きく分類すれば「ゾンビもの」になるのだろうが、登場する怪物たちは従来のゾンビのように血液や細菌などを介して感染するのではなく、人間の「欲望」によって怪物化していく。この設定が後半に効いてくる。
スピーディーな展開とハードな描写が続き、『バイオハザード』のようなホラーゲームをプレイする感覚で観られるが、次第にキャラクターたちに魅了され、やがて人間ドラマの渦に飲み込まれていく。全10話という長さもちょうどいい。一気観、間違いなしの傑作だ。
【Sweet Home-俺と世界の絶望-】
出演:ソン・ガン、イ・ジヌク、イ・シヨン
原作・制作:イ・ウンボク、ホン・ソリ、チャン・ヨンウ、キム・ヒョンミン、パク・ソヒョン、パク・ソジョン
人気監督による呪殺スリラー『謗法~運命を変える方法~』
「私が呪い殺してあげます」――。 本作の主人公は、写真と漢字で書かれた名前、その人の持ち物さえあれば、相手を呪い殺すことができる「謗法(ほうぼう)師」の少女、ソジン(チョン・ジソ)。正義感あふれる新聞記者のジニ(オム・ジオウォン)とともに、悪霊を使って悪事をはたらく新興IT企業と戦う。もうひとつ注目は、主人公のソジンを演じているチャン・ジソ。アカデミー賞4部門を受賞した『パラサイト 半地下の家族』(19年)で、金持ちの家の女子高生を演じていた若手女優だ。暗い運命を背負い、他人をいとも簡単に呪い殺すことができる能力を持つ少女役をミステリアスに演じている。
『新感染 ファイナル・エクスプレス』(16年)でセンセーションを巻き起こしたヨン・サンホ監督が脚本を担当しているのもポイント。本作が初めて執筆したドラマ作品となる(演出はマ・ドンソク主演映画『ファイティン!』のキム・ヨンワン監督)。巨悪の企業と主人公たちが戦う物語は、『ヴィンチェンツォ』や『悪霊狩猟団:カウンターズ』などと共通しているが、これらの作品同様、本作にもスタジオドラゴンが企画に携わっている。まさにスタジオドラゴン無双。こちらはFODで独占配信中。
【謗法~運命を変える方法~】
配信:FOD
出演:オム・ジウォン、チョン・ジソ、ソン・ドンイル他
『クェダム 禁断の都市怪談』都市伝説の恐怖を描くショートオムニバス
日本のホラー映画が好きな人が意外とハマるんじゃないかと感じたのが、Netflixで配信中のオムニバスホラー『クェダム 禁断の都市怪談』(20年)。全8話合計64分という短編なので、サクッと観ることができる。韓国版『世にも奇妙な物語』とか、韓国版『怪談新耳袋』なんて評されることもある本作。短い分だけ展開もスピーディー。「うわっ、ヤバっ」と思った瞬間、ものすごい勢いで怪異が現れて、「ギャッ!」と思っている間に登場人物を猛烈に酷い目にあわせてデデン!と終わる。
夜、ベッドに入ってスマホで観るのもよし、パーティー(あ、今はダメか)で流してみんなで怖がるのもよし。いろいろな楽しみ方ができるホラードラマだ。
【クェダム 禁断の都市怪談】
配信:Netflix
出演:ソラ、イ・ヒョンジュ、ソン・チェユン 他
<TEXT/ライター 大山くまお>
【大山くまお】
ライター。「QJWeb」などでドラマ評を執筆。『名言力 人生を変えるためのすごい言葉』(SB新書)、『野原ひろしの名言』(双葉社)など著書多数。名古屋出身の中日ドラゴンズファン。「文春野球ペナントレース」の中日ドラゴンズ監督を務める。 Twitter:@oyamakumao note:https://note.com/oyamakumao(出典 news.nicovideo.jp)
Netflix, Inc.(ネットフリックス、NASDAQ: NFLX)は、カリフォルニア州ロスガトスに本社を置く、アメリカのオーバー・ザ・トップ・コンテンツ・プラットフォームおよび制作会社である。1997年にリード・ヘイスティングスとマーク・ランドルフによって、カリフォルニア州スコッツバレーで設 72キロバイト (8,882 語) - 2021年8月26日 (木) 07:20 |
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