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2017年白井晃の演出で上演されたKAAT神奈川芸術劇場プロデュース『春のめざめ』は、志尊淳、大野いと、栗原類といった話題の若手キャストの出演とあって連日満席、追加公演のチケットも即完売と大きな話題を呼んだ舞台だ。この作品が2019年春に再演されることが決まった。主人公メルヒオールには映画やドラマでの活躍がめざましい伊藤健太郎ヒロインヴェントラ役にはモデルや女優として活動する岡本夏美がオーディションにより決定、メルヒオールの友人モーリッツ役は栗原類が初演から続投する。

『春のめざめ』は、120年以上前にドイツで書かれた戯曲で、出版当初は検閲により上演禁止となった問題作だが、今や世界各地で上演されている人気の作品。思春期の少年・少女たちの姿を生々しく鮮やかに描いた今作の主人公、メルヒオール役に挑む伊藤健太郎に、公演にかける思いを聞いた。

映像とは全く違う、舞台の魅力と楽しさ

ーーまずはこの舞台への出演が決まったときの感想を教えてください。

僕自身はこれが2回目の舞台出演で、前回の出演のときに、舞台の持つライブ感にすごく魅かれるものがありました。前回とはまた全然違った作品に出演できることはすごく楽しみですし、うれしいという気持ちが一番強かったです。

ーー具体的にどういったところに舞台の魅力を感じましたか?

映画やドラマは編集が入ったり、NGがあってもやり直しがきいたりするけれども、舞台はそうはいかないですよね。スクリーンとかテレビ越しじゃない、フィルターが一枚もない状態で、その場でやっていることの一挙手一投足、つむじから足の先まで全部が見られているので、もちろん緊張感もありますが、でもそれが気持ちよかったんです。目の前にお客さんがいっぱいいて、その場でダイレクトに皆さんに反応してもらえて、自分が舞台上でやっていることがすべて伝わっていく感覚、というのにすごく魅力を感じたし、楽しかったです。

ーーご自身の中で、舞台と映像の違いをどのように感じていらっしゃいますか?

例えば、舞台は1か月くらい稽古期間がありますよね。もちろん映画とかドラマでもリハーサルはありますが、みっちり稽古を1か月間やって本番に挑む、というのとは大きく違うものがあると思います。舞台を観に来てくれたお客さんのほとんどは、観た回が最初で最後の鑑賞だと思うので、その1ステージのための稽古1か月間というのは、映画やドラマとは全然違う部分ですね。映像はクランクインしてからどんどん作り上げて確立していく感じがあるのですが、舞台は稽古で確立してからが本番。そこが大きな違いであり、楽しい魅力的な部分かな、と思います。

自分とは違う「14歳」の役作りに向けて、その秘訣は?

ーー『春のめざめ』という作品に対して、どのようなイメージをお持ちでしょうか?

思春期の子たちが考えていることって、時代は違っても根っこの部分ではみんな一緒だな、ということをすごく感じています。その時代の社会とか、その時代ならではの考え方とか、宗教のこととか、そういった部分での違いはもちろんありますが、心と体が離れていく感じ、どちらかが先に行ってしまって追い付かない感じとかは、たぶん今この時代に思春期を迎えている子たちも考え方や感じ方は一緒だと思うんです。だから共感できる部分はたくさんあると思います。

ーーメルヒオールは10代の男の子で優等生。自分と似ていると思う部分はありますか?

似ている部分は……結構少ないですね。彼みたいに理屈で話したり動いたりすることはあまりなかったので。僕自身は、実際にやってみないとわからないこともあると思っていて、だから考えるより行動、と感覚で生きてきたところがあります。でも彼は考えてから行動する人で、しかも他の子たちよりも精神年齢が高いんじゃないかな。メルヒオールに関しては、体はまだ子供だけど、心が大人に近づいて行ってるパターンだと思います。僕はたぶん逆で、図体ばっかりデカくなって、心はまだガキだったな、と思っていたので、そこは違う部分なのかな、と感じました。

ーー伊藤さんご自身は、どんな14歳だったんでしょう?

14歳のときは、大人は全員敵だと思っていました(笑) 親に対しては反抗期らしいものがあまりなかったのですが、外の大人たち、学校の先生とかに歯向かいまくっていました。「今のお前の気持ちもわかるけど、いずれは違うように思うんだよ」とか言われても、それは違う、それはあなたの当時の考え方であって、自分は違う、とか。大人から正解を言われているな、とわかっていても、あえて違う方向に行って、大人の言う方向に行きたくない、っていうのはありました。

ーーその頃のことを、今はどう思っていますか?

本当にごめんなさい、って感じです(笑) 特に学校の先生には本当によくしてもらってたんです。当時は何も気づいていなかったのですが、高校になってお仕事をやらせていただく機会が増えて、たぶん出席日数とかで卒業が危なかったと思うのですが、何とかなるようにいろいろ手を尽くしてくれて。だからものすごく感謝しています。先生とは、今はすごく仲いいんですよ。

ーーこれから14歳の役作りに挑むことになりますが、映像作品での伊藤さんを拝見していると、役ごとに印象が全然違って毎回驚かされます。ご自分ではどういった意識を持って役作りに挑んでいらっしゃるんでしょうか?

一番大きいのはメイクさんとか衣裳さんに、髪型や服装といったビジュアルとしての土台をまず作ってもらうことですかね。形から入る、じゃないですが、このビジュアルだから言えるセリフ、ってあると思っているので。あとは、小さいころから人を見るのが好きで、かっこいい言い方をすれば人間観察なんですけど。人の仕草を自然にやるのって、なかなか難しいんですよ。だからどれだけいろいろな人の仕草を見てきたか、が僕にとっては大きいと思います。例えば白い線があって、その白い線から絶対落ちないように歩く人っているじゃないですか。「ああ、こういう人いるわ」と思うと、だんだんその人に好感が持てるんですよね。そのつかみがすごく大事だと思います。

今回の挑戦は「思春期の子たちに何も刺さらない作品にする」こと

ーー演出の白井さんの作品はご覧になったことがありますか?

『バリーターク』を拝見しました。あの作品の走り抜けている感じというか、世界観が大好きで、それを作り出した演出家の白井さんとご一緒できるのはすごくうれしいです。いろいろな先輩に聞いたら、本当に一からしっかり教えてくださる方だということなので、僕も舞台経験が浅くてわからないことがたくさんあるので、いろいろ教えていただけたらいいな、と思っています。

ーー音楽担当は降谷建志さんですが、降谷さんについてはいかがでしょう?

めちゃめちゃ好きなんですよ。元々Dragon Ash​が好きで聞いていましたし、2015年に出演したドラマ「トランジットガールズ」の主題歌が、降谷さんがソロで出された曲だったんです。前回出演した舞台でMEGUMIさん(降谷の妻)と共演したのですが、本番を降谷さんが観にいらして、そのとき初めてお会いしてホント嬉しくて。だから、降谷さんが音楽担当って最高ですね。テンションブチアガりです!

ーー共演者の方たちはいかがですか?

皆さん初めての方たちです。僕の役柄的に、変に染まりすぎていてもあまりよくないと思うので、新しいところに飛び込むという感じで、それが「少年感」という形でうまく出せたらいいな、と思っています。

ーー多くのドラマにご出演されたりと非常にご活躍ですが、その中でこうして新しい挑戦をすることへの想いを教えてください。

自分のできることの範囲というか幅みたいなものって、やってみないとわからないじゃないですか。だから、自分が進みたい道を逸れない限りいろいろ挑戦していきたいなという気持ちはものすごくあります。現時点で僕がずっとやり続けたいと思っているのは「役者」なので、その中でこうやっていろいろなことに挑戦できる環境にいられるのは周りの人たちあってのことなので、ありがたいですし、すごくうれしいです。自分の中の可能性というか、こんなこともやれるんだ、やりたいと思えるんだ、とか、これまで気づかなかったこともたくさんあるので、毎日楽しいです。

ーーこの「春のめざめ」への挑戦は、どういってものになりそうですか?

思春期の子たちのマインドとか行動が、観客の皆さんにどれだけ刺さるのかなと考えたとき、思春期を終えた大学生とか、もっと大人の人たちにはすごく刺さると思うんです。でも、リアルに今思春期の子たちは、たぶん理解できちゃうから、逆に何も刺さらないと思うんですよね。変に刺さってしまったらそれは間違いなのかな、と思っているので、思春期の子たちが何も刺さらず「まあそうだよね」って感じで帰ってくれたら勝ちだな、って思います。そのためには彼らと同じ目線で演技しないといけないので、そこはものすごい挑戦ですね。すごく難しいですが、でもやっぱりそれくらいやりがいのある作品であり、役だなと感じています。

取材・文=久田絢子 撮影=荒川 潤

伊藤健太郎

(出典 news.nicovideo.jp)



【伊藤健太郎】
伊藤健太郎(けんたろう、1997年6月30日 - )は、日本の俳優。 旧芸名は、健太郎(けんたろう)。東京都出身。aoao所属。 14歳でボン イマージュに所属。雑誌、広告を中心にモデルとして活動し、2014年、ドラマ『昼顔〜平日午後3時の恋人たち〜』で本格的に役者デビュー。演技が注目され、話題を集める。2018年6月30日21歳の誕生日を迎えたことを機に芸名を本名の伊藤 健太郎名義に改名することを発表。
★テラスハウス(2016年2月~フジテレビ、Netfilx)スタジオコメンテーター

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